今回は、公益通報者保護法において保護の対象となる事柄は何かについて、内部通報制度における保護の対象となる事柄と比較して検討を行っていきます。

 

公益通報者保護法の対象となる事柄は法2条1項に「通報対象事実」であると規定されており、「通報対象事実」の内容は法2条3項(及び別表)に規定されています。

 

「公益通報者保護法2条3項」

一  個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。次号において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実

二  別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。)

「別表記載の法律」

①刑法 ②食品衛生法 ③金融商品取引法 ④農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 ⑤大気汚染防止法 ⑥廃棄物の処理及び清掃に関する法律 ⑦個人情報の保護に関する法律 ⑧前各号に掲げるもののほか、個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として政令で定めるもの

 

そうすると、公益通報者保護法による保護の対象となる「通報対象事実」とは、法律に違反する事実であるということになります。そうすると、ある問題が発生したとして、公益通報者保護法を利用しようとしても、それが公益通報者保護法の対象となる事実であるかは一概には判断できない場合があり、そのため利用をためらってしまうこともありえます。例えば、セクハラが問題になった場合、そのセクハラ行為の態様によって、強制わいせつ罪にあたる場合も、迷惑防止条例違反にあたる場合もあり、公益通報者保護法を利用しづらい場合が想定できます(条例は法律ではないので、公益通報者保護法の対象ではありません。)。

 

他方、内部通報制度では、通報の対象事実を自由に設定でき、公益通報者保護法よりも広い範囲の事実を通報対象に設定できます。そうすると、規定の仕方によりますが、従業員等も、内部通報制度の対象だと判断しやすくなります。したがって、コンプライアンスを重視する経営においては、公益通報者保護法だけではなく、積極的に内部通報制度を設けることが重要になってきます。

 

次回は、通報先について検討していきます。

(SRM NETWORK 顧問弁護士 植野礼央)